トピックス(経験が人間の善悪を育てる)
赤ちゃんにも善悪がわかる!? その答えは・・・
CNN JP 2014年5月6日
http://www.cnn.co.jp/fringe/35045208.html
(CNN) 赤ちゃんの道徳観を研究している立場上、「人間は生まれながらに善人だったり悪人だったりするのか」と質問されることがある。私の答えは「イエス」だ。
 たいていの大人は善悪の観念を持っている。サイコパスでもないかぎり、残虐な行為には恐怖を覚え、親切な行動を目のあたりにすると勇気づけられるものだ。窮地にある人に救いの手を差し伸べ、犯罪者に罰を与えたいと思うのは、ごく普遍的な道徳的衝動だ。
 赤ちゃんについても同じことが言える。人間の道徳観などについて考察した自著のなかで、こういう道徳的衝動が人間の生物としての進化の産物なのではないかと論じた。
 人間の脳には生まれつき道徳観念が組み込まれており、赤ちゃんや幼児でさえ、他人の行動の善悪を判断できる。そして、善行に報い、悪行を罰したいと自然に欲するものなのである。突飛な主張だと思われるかもしれないが、多くの研究室で立証されている。
 米エール大学の私の研究室では、人形を使った道徳劇を赤ちゃん相手に見せ、その反応を観察した。他人が坂を上るのを手助けするような善人役の人形と、逆に坂から突き落とすような悪人役の人形とを対照させて上演。赤ちゃんの表情や行動を見て取ることで、どのような道徳判断を下しているのか分析した。
結果として判明したのは、生後3カ月の赤ちゃんですら、善人役の人形を好むということだ。
 もう少し年長の赤ちゃんや、よちよち歩きを始めた幼児になると、善人役に報酬を与え、悪人役には罰を与えるようになる。さらに、自分と同じ道徳観念を持った人形に愛着を示すこともわかった。つまり、善行に報いる正義の味方の人形の方が好かれるのである。
 このように普遍的な道徳感覚が存在することが立証されたのは、良いニュースだ。
 ただ、赤ちゃんの段階の脳というのは、自然淘汰(とうた)の産物であり、その先天的な道徳観には当然ながら限界がある。実際、数々の研究で判明しているように、赤ちゃんの道徳的判断というのは、最初、融通が利かない。世界を硬直的に「自分たち」と「彼ら」に二分してしまって、自分たちのグループにかたくなに肩入れするのである。
 さらに、他者に対する親切心や共感となると、また別の話になってくる。
 ただ、幸運なことに、私たちはこのような生物学的限界を乗り越えることができる。現代の人間であれば、平等や万人の自由といった抽象的な道徳概念を持っており、あえて敵を愛することもできる。
 後天的に道徳思想に触れることによって、完璧とは言わないまでも、人は成長して善人に近づくことができる。実際、社会はこうした抽象的な道徳観念に基づいて形成されているのである。
 最後に、私たちの研究の意義について述べよう。一つには、親の側で赤ちゃんや子どもに対する見方が変ってくるはずだ。生まれたばかりの赤ちゃんは道徳性のかけらもない、ちっちゃなサイコパスだと思われている節がある。ある種の赤ちゃんが遺伝的に救いようのない悪玉だと考える人もいる。
 こうした冷笑的な見方は誤りだ。私たちは生まれながらにして道徳的なのであり、環境次第で、その先天的な道徳感覚が高まることも堕落することもありうる。
 さらに、人間の先天的な道徳心理を理解することで、より良い社会の創造につながるだろう。優れた社会政策を立案するにあたっては、良きにつけ悪しきにつけ、人間の先天的な善悪の資質を知ることが欠かせない。これこそ「赤ちゃんの道徳学」が目指すところだ。

本記事は、米エール大学のポール・ブルーム教授(心理学)によるものです。記事における意見や見解はすべてブルーム氏個人のものです。

用語(サイコパスとは)
サイコパス、psychopath(精神病質)
 精神病質という用語は歴史的に種々の意味で用いられてきている。精神病の病前性格という意味であったり,精神病と正常な気質との中間という意味であったりした。シュナイダー(Schneider, K.)は平均的像という意味で定義される正常な人格からの逸脱で,その人格のために本人または社会が悩むものを精神病質としたが,今日ではシュナイダーのいう意味でこの語が用いられることが多い。情性欠如,爆発性,無力性などに分けられる。(心理学辞典、有斐閣、1999


トピックス(虐待の経験が暴力的行動を引き出す)
たたかれた回数の多い子どもは暴力的に育つ、米研究
AFP 2010年04月15日
http://www.afpbb.com/articles/-/2718632?pid=5610863
 3歳のころに頻繁にたたかれた経験をもつ子どもは、5歳時には攻撃的な性格になる傾向が強い――。こうした研究結果が12日、発表された。
 この研究結果は、たたかれた経験がある子どもはIQテストで低い点数しかとれず、頻繁にたたかれることは不安症や行動障害などに関連しているとされていることや、暴力的または犯罪的行動やうつ、アルコールの過剰摂取などのリスクが高まるといった、これまでの研究を裏付けるものだ。
 米テュレーン大学(Tulane University)公衆衛生学部の研究チームは、全米で3歳児をもつ2500人の母親を対象に調査を行った。そのうち半数近くの母親が、過去1か月に子どもをたたいていないと回答。一方で、27.9%が1〜2回たたいたとし、26.5%が3回以上たたいたと回答した。
 2年後に再び調査を行った結果、頻繁に子どもをたたいていたと回答した母親の子どもは、口論する、叫び声を上げる、けんかする、物を壊す、残酷になる、いじめを行うなど、より攻撃的な性格になっていたという。この結果は、家庭内暴力や親のストレス、うつ、薬物・アルコールの使用などの潜在的な交絡因子を考慮に入れた上でも当てはまったという。
 米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)は、いかなる理由であっても子どもをたたくことには強く反対しており、子どもが望ましくない行動をとったときにはタイムアウト(反省させるために、部屋などでしばらくの間静かにさせておくこと)や、子どもが好きなこと(ビデオゲームや携帯電話の使用など)を禁止すること、おもちゃを片付けなければおもちゃを取り上げるなどの方法を薦めている。
 この研究結果は、小児科専門誌「Pediatrics」の5月号に掲載される。(c)AFP

用語(「本性と経験」の影響)
性善と性悪の心理
性善説
人間は善を行うべき道徳的本性を先天的に具有しており,悪の行為はその本性を汚損・隠蔽することから起こるとする説。正統的儒学の人間観。孟子の首唱。
孟子(もうし)
紀元前372年? - 紀元前289年)は戦国時代中国の儒学者。

性悪説
人間の本性を利己的欲望とみて,善の行為は後天的習得によってのみ可能とする説。孟子の性善説に対立して荀子が首唱。
荀子(じゅんし)
紀元前313年? - 紀元前238年以降)は、中国の戦国時代末の思想家・儒学者。

「魔術と脱魔術」
の心理学
 魔術の世界
 「感情とイメージ」による受け止め
 
現象の背景に「神」「悪魔」「魔女」などの
 絶対者・超越的存在を想定する考えかた
 脱魔術の世界
 「科学的な方法」による受け止め

 現象の背景を観察や実験により合理的・理論的にとらえる
 原因と結果の関係を科学的にとらえる。

 
気象現象の事例:
  落雷の恐怖と被害は甚大。これは「天罰」か?
  フランクリンは観察と実験により
  雷現象の原因は自然界での電気現象とした
  その結果、「予測」と「制御」が一定の範囲内で可能となった
  →気象情報と避雷針
  →魔術など絶対的支配からの解放として象徴的
 ビデオクリップ
   
アメリカの雷と洪水報道
  ★フランクリンBenjamin Franklin 1706〜90
   アメリカの政治家・文筆家・外交官・哲学者・科学者。
   雷は電気現象との仮説を支持し、1752年、凧(たこ)を
   つかって実験をおこない、その実験方法を公刊。
   避雷針を発明した。


「感情とイメージ」の心理学
呪術
非人格的・超自然的な存在にはたらきかけて,種々の現象を起こそうとする信仰と慣行。(大辞林より)

占い
超自然的存在と直接・間接に交流して、秘密の知識を手にいれたり、過去・現在・未来のことを知る力をえるための方策。西洋以外の宗教はもとより、ユダヤ教や初期のキリスト教とも、切っても切れない関係にあった。(エンカルタ2004、マイクロソフト、より抜粋)

まじない
神仏や霊力をもつものに祈って,災いを逃れようとしたり,また他人に災いを及ぼすようにしたりすること。また,その術。呪術。(大辞林より)

「幸運と不吉」の心理
カラスのイメージを例に
 スズメ目カラス科の鳥のうち,大形でくちばしが大きく,全体に黒色のものをいう。日本ではハシブトガラスとハシボソガラスが全国に普通。
 全長50〜60センチメートルで,羽には光沢がある。田園や人家近くにすみ,雑食性で何でも食べる。古くから,神意を伝える霊鳥とされたが,現在は凶兆を告げる鳥と考えられることが多い。(大辞林より)

ビデオクリップ
カラスは・・・好きです!東京
→カラスは「不吉な鳥」「邪魔な鳥」と言う
 否定的イメージがあるが
 実は・・・
 日本サッカー協会のエンブレムは
 「カラス」がシンボルになっている・・・
  →カラスは日本の文化では
  「神の使い」として縁起のいい鳥、
  とされてきた歴史がある。


「勘違いと思いこみ」の心理
用語(思いこみはなぜ修正できないか)
確証バイアス confirmation bias
 ある考えや仮説を評価・検証しようとする際に,多くの情報のなかからその仮説に合致する証拠を選択的に認知したり,判断において重視したりする傾向。仮説に都合の悪い情報は無視されやすい。この結果,当初の考え(信念)は維持されやすい。
 また,情報が所与でない場合に,仮説を肯定する証拠を選択的に収集しようとする(確証的方略をとる)傾向のこともさす。
 日常の社会的場面では,仮説を反証する情報を探すことはほとんどなく,仮説を診断するのに適切な情報収集方法(診断的方略)をとる場合も限られている。心理学辞典、有斐閣、1999


ビデオクリップ
火星人襲来パニック
→米CBSが放送した「火星人襲来」のラジオドラマがパニック行動をゆうはつした



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