基礎系心理学の構図と展開
 知覚→学習→認知→記憶

 
資料
学習learning
 個体発生過程において,経験により比較的永続的な行動変化がもたらされること,およびそれをもたらす操作,そしてその過程。
 高等とよばれる動物種ほど,適応行動全体に占める獲得的行動の割合が高くなる。この結果,動物は生後の環境変化に対しても行動の修正が可能となり,より適応的になる。
 心理学における学習研究は,エビングハウスの記憶実験に始まり、20世紀初頭にかけて,学習研究はさまざまな分野で始まった。
 パヴロフの古典的条件付け(条件反射),ソーンダイクの試行錯誤学習,ケーラーK_hler, Wolfgang(1887-1967)の洞察学習,ワトソンの行動主義とともに,その後の学習研究に大きな影響を与えた。

学習のタイプ

1 基本型
古典的条件付け classical conditioning
 19世紀末期にロシアの生理学者パブロフPavlov, Ivan Petrovich(1849-1936)が発見した。犬をつかい、食物と関係ない音叉(おんさ)の音に対して唾液を分泌させる実験を行った。
 条件付けのためには、(条件刺激)の音を聞かせてから食物(無条件刺激)を出すことを反復しておこなう。犬はしだいにその2つをむすびつけ音叉の音だけで唾液を分泌するようになる。

図 こちら

ビデオクリップ
古典的条件づけ(パブロフ)
リンク(日本語訳あり)
画面右下の歯車をクリック)、字幕をクリック、字幕、自動翻訳をクリックしスライダーで日本語を選択する

https://www.youtube.com/watch?v=hhqumfpxuzI
パブロフ本人が実験する動画(1分50秒まで)
実験をアニメで解説(1分50秒から3分9秒まで)
「リラックス」をピストル音(恐怖感)を結びつける学習例(3分10秒から3分53秒まで)


オペラント条件付けOperant Conditioning
 スキナーSkinner, Burrhus Frederic(1904-90)が創案した条件付けの一種。オペラント条件付けとは、「どのような反応であれ、それに正の(負の)強化をあたえれば、その反応の生起確率は増す(減る)」という単純な原理によってなりたつ学習性の行動変容。
 スキナーのオペラント条件付けの考えは、古典的条件付けの考えとともに、学習の基本原理として20世紀前半の行動主義心理学の中心的役割をになった。

ビデオクリップ
Operant Conditioning(スキナー)

リンク(日本語訳あり:
https://www.youtube.com/watch?v=I_ctJqjlrHA
ハトが表示された文字を自ら突くとえさが食べられることを学習(33秒まで)
ハトが学習する経過を自動記録する装置と場面(34秒から1分26秒)
スキナー本人がスロットマシンゲームへの応用例を紹介(2分24秒から3分55秒)

2 応用の学習系
 こちら
 試行錯誤学習、オペラント学習、洞察学習のイラスト

試行錯誤学習
trial and error
 ソーンダイクThorndike, Edward Lee(1874-1949)は、木の箱の中にネコをいれ、そのネコが箱をあける仕掛けをどのように発見するかをしらべた。ネコがたまたまその仕掛けをうごかすと、外にでられる。
 そこでまた箱の中にいれる。これをくりかえすうちに、ネコは箱にいれられるとすぐにこの仕掛けをはずして外にでるようになった。この場合、問題解決行動は、試行錯誤によって徐々に習得されている。
 そこから行動主義の立場では、ある刺激に対してはまずそれにもっともおこりやすい反応が生じるが、それが今の問題解決に適合しない場合、順次ほかの反応が生起し、その過程で最終的に適切な反応が生じると考える。


ビデオクリップ
ネコによる問題箱実験(ソーンダイク)
リンク(日本語訳あり)
https://www.youtube.com/watch?v=BDujDOLre-8
ネコは擬以前発見した箱からの脱出法を自ら学習する(2分20秒まで)
試行錯誤による学習のグラフを紹介、ネコはレバーとラッチの外し方を学習し、えさを食べる(2分21秒から最後まで)

洞察学習insight
 ゲシュタルト心理学の創始者のひとりであるケーラーK_hler, Wolfgang(1887-1967)は、ソーンダイクの試行錯誤説に反対し、問題解決は一歩一歩、漸進的にすすむものではなく、洞察によって一気に解決にいたるものだと考え、これをチンパンジーの問題解決行動の記述をとおして明らかにした。
 あるチンパンジーは、天井からぶらさがったバナナをとろうとして、何度かそれにとびつこうとしたがとどかない。おりの中には台がある。しばらくバナナや台をみていたこのチンパンジーは、突如として台をバナナの下にはこんでそれにのぼり、バナナを手にいれた。この場合の問題解決は、試行錯誤によらずに洞察によって一挙に達せられている。
ビデオクリップ
洞察学習(ケーラー)

刻印づけimprinting(学習)
 ニワトリ,アヒル,カモなどのように孵化直後から開眼し,歩行可能な離巣性(早成性)の鳥類の雛では,孵化後の特定の時期に目にした「動くもの」に対して後追い反応を示す。親だけでなく,多種の動物や人,動くおもちゃ,あるいは点滅光であっても,後追い反応が生じる。この現象を刻印づけ,あるいは刷り込み,インプリンティングという。練習や経験が不要で,条件が満たされた時に,きわめて短い時間のうちに成立する。
 刻印づけはかなり固定的なプロセスではあるが,自然場面では,孵化直後の雛が目にする最初の動くものは母鳥であり,この母鳥への後追い行動は雛の発達初期の生存にきわめて適応的な行動と理解される。(心理学辞典、有斐閣、1999から抜粋)

ビデオクリップ
  カルガモの親子

  刷り込み学習(ローレンツの実験)

  母親アヒル、愛のムチで子アヒルらに人生を教える【動画】
  ハフィントンポスト 2014年06月29日

  http://www.huffingtonpost.jp/2014/06/28/ducks-stairs_n_5540577.html


3 社会性の学習系
社会的学習social learning

 人は家族や周囲の他者との人間関係の中で、また社会・文化的枠組みの中で、パーソナリティを形成し社会生活に必要な対人関係の技、スキルを身につけて成長していく。 
 社会規範をまなび、善悪の分別を身につけ、挨拶その他の社交的スキルを身につけるという社会的行動には学習が関与しており、またそのような学習には、すべて社会的、文化的な影響がおよんでいる。
 このように、社会的行動の学習という側面(これは社会心理学では社会化と同義に考えられている)と、その社会的行動の学習に各人が属する社会や文化が強い影響力をもっているという側面をあわせて、社会的学習とよぶ。モデリングや同一視などもこれに類した用語である。

観察学習observational learning
 社会的学習の概念は、N.E.ミラーMiller, Neal Elgar(1909- )とJ.ダラードがその模倣学習説を説明する中で最初にもちいたものである。彼らは社会的現象をオペラント条件付けにもとづく学習理論によって説明しようとし、まず模倣(もほう)現象をとりあげた。
 彼らによれば、模倣は模倣者がモデルを観察し、モデルと同じ行動をしたときに強化をうけることによって定着する。
 モデルと模倣者は子供と親、教師と児童・生徒のように、社会的関係にあり、またモデルの観察や強化がなされるのは社会的な場においてであるから、社会的学習とよばれたようである。

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