性格特性論personality trait theory 再掲
 性格特徴のなかで,一貫して出現する行動傾向やそのまとまりを特性という。特性をパーソナリティ構成の単位と見なし,各特性の組合せによって個人のパーソナリティを記述する立場を性格特性論という。性格類型論がドイツを中心としたヨーロッパ諸国で発展したのに対して,特性論はイギリスおよびアメリカの研究者が中心となり,パーソナリティの基本特性の決定に因子分析を導入したことによって大きく発展した。R
 . B. キャッテルの研究は,その代表的なものである。性格特性論では,個人間のパーソナリティの相違は程度の問題であって,質の問題ではないと考えている。したがって,各個人のもつ諸特性の量的差異が明らかになれば,それから各個人の性格特徴を詳細に読みとることができ,また個人間の相違を比較しやすい。しかし,その反面,人の統一性や独自性を捉えにくいという欠点がある。(心理学辞典、有斐閣、1999)

性格類型論personality typology 
 一定の原理に基づいて,典型的な性格を設定し,それによって多様な性格を分類し,性格の理解を容易にしようとする立場。ギリシア時代にまでさかのぼりうる古い歴史をもち,20世紀前半のドイツにおいて著しく発展した性格論である。
  類型の基礎を体質的,生物学的な特性に求める立場(クレッチマー,シェルドンなど)や心理的な特徴に求める立場(シュプランガー,ユング,イェンシュなど)がある。一定の理論的背景のうえに構成され,典型例が明示されているために,性格を直観的・全体的に把握するのに便利である。しかし,少数の型に分類する時に中間型や移行型が無視されやすく,また性格を固定的に考えやすいという欠点もある。(心理学辞典、有斐閣、1999)

クレッチマーの分類
 クレッチマーは多数の精神病患者の体型をしらべ、精神分裂病(統合失調症)の患者の多くは細長型の体型であり、躁うつ病(→ うつ病)の患者の多くは肥満型の体型、てんかん患者は筋肉質の体型であることをみいだした。そして、その体型と精神病の型とになんらかのつながりがあると仮定して、3つの基本的な気質類型を区別した。すなわち、分裂気質、循環気質、粘着気質である。(エンカルタ2004、マイクロソフトから抜粋)
資料(図版あり)
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
https://kotobank.jp/word/%E4%BD%93%E8%B3%AA%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6-1557643

ユングの理論
 類型説としてよく知られているのはユングの内向・外向説である。ユングは人の心的エネルギーが主として自分自身にむかうか、他者にむかうかによって人の性格は大きくわかれると考えた(これはクレッチマーの分裂気質・循環気質の基本対立軸と重なる)。
 内向型は自分自身に関心がむかい、内気で思慮深いが、実行力にとぼしく協調性にかけるのが特徴であり、他方、外向型は外部の刺激に影響されやすく、情緒の表出が活発で統率力があり、協調性が大であるのが特徴である。(エンカルタ2004、マイクロソフトから抜粋)

資料(環境とつきあう技
適応adaptation
 生物が環境に合うように自らの身体や行動を変容させること,またはその状態をさす。もっとも,その調節をもたらす仕組は多様であり,その捉え方によって適応の意味も多義的である。
系統発生的な適応
 自然選択によって集団中に何らかの遺伝的な性質が広まっていく過程,もしくはそれによって個体の生存や繁殖がより有利になった状態を適応とすることができる。
個体発生的な適応
 個体が生後の発達のなかで遺伝情報と経験をもとに,物理・社会的環境との間において,欲求が満足され,さまざまな心身的機能が円滑になされる関係を築いていく過程もしくはその状態をいう。心理学領域では適応をこの個体発生的意味で扱うことが多い。(心理学辞典、有斐閣、1999より抜粋)

適応機制adjustment mechanisms  
事前教材になかった部分
 欲求不満(フラストレーション)や葛藤(コンフリクト),不安に直面した時に,心理的な平衡状態を維持,回復するために無意識のうちにとるさまざまな心理的な手段をいう。攻撃的なもの,逃避的なもの,防衛的なものなどに分類される。
 防衛機制のことを,不快な感情を低減して思考や行為をより効率的にするといった建設的,適応的な側面を強調して,適応機制とよぶことも多い。この場合には,対処機制とよばれることもある。
 防衛が適応的なものとなるには,全般的な衝動活動や本能満足に向けられているのではなく,一つの衝動に対するものであること,あまりに原始的であったり早熟なものではなく,年齢に見合ったものであること,特定のものだけに過度に頼ることなく,多くのものを自由に使いこなしてバランスが取れていること,不安の処理に有効であること,不安定とならずに,安定を得られること,外界の出来事と無関係に生じるのではなく,関連をもっていること,などが必要とされる。(心理学辞典、有斐閣、1999)

防衛機制defense mechanisms
 不安や抑うつ,罪悪感,恥などのような不快な感情の体験を弱めたり,避けることによって心理的な安定を保つために用いられるさまざまな心理的作用で,通常は意識して生じることはない。
 苦痛な感情を引き起こすような受け入れがたい観念や感情を受け流すために無意識的にとる心理過程をS. フロイトが防衛という用語で1894年に初めて記述して以来,さまざまな種類の防衛機制が主として精神分析学者たちによって検討されてきた。
 なかでも抑圧は最も基本となるもので,初期には防衛とほとんど同義に用いられていた。A. フロイト(Freud, A.1936)は初めて防衛機制という用語のもとに,抑圧,退行,反動形成,置き換え,投影,隔離,打ち消し,否認,自己への向けかえ,逆転をあげ,ほかにも攻撃者との同一化(同一視),愛他主義などについて記載している。また,クライン(Klein, M.1946)は子どもの治療から,分裂(splitting)や投影性同一化,否認,理想化といった原始的防衛機制を明らかにした。(心理学辞典、有斐閣、1999より抜粋)

資料防衛機制の用語)
抑圧repression
代表的な防衛機制で,観念,感情,思考,空想,記憶を意識から締め出そうとする無意識的な心理的作用。多くの防衛機制のなかでも最も基本的なものとして,しばしば他のものとともに作用する。
退行regression
以前の未熟な段階の行動に逆戻りしたり,未分化な思考や表現の様式となること。
反動形成reaction formation
受け入れがたい衝動や観念が抑圧されて無意識的なものとなり,意識や行動面ではその反対のものに置き換わること。憎しみの感情に代わって愛情だけが意識される,だらしない代わりに極端に几帳面になる,拒否感を否定するために子どもに過保護になる,などはこの例である。


心理テスト
 心理学ではフィールドでの調査がしばしばおこなわれる。調査は質問紙配布、個別インタビュー(聞きとり)、フィールド観察など種々の方法がある。質問紙をもちいる場合には質問項目の事前の吟味が必要である。それには尺度構成法や項目分析などの方法がもちいられ、質問項目の内的整合性や妥当性があらかじめしらべられる。
 また、知能テストや性格テスト(→ 性格検査)など種々のテストが調査にもちいられることがあるが、この場合も、テスト項目の事前の吟味に関して質問紙と同じ手続きが必要である。さらに、このテストが一般性、妥当性をもつことをいうために標準化の手続きがおこなわれる。
 質問紙による性格テストとしては、矢田部=ギルフォード性格検査、ミネソタ多面性性格検査(MMPI)、東大式エゴグラム(TEG)、モーズレー性格検査(MPI)などがある。投影形式の解釈テストとしては、ロールシャッハ・テスト、絵画フラストレーション・テスト(PFスタディ)、絵画統覚検査(TAT)などがあり、投影形式の描画テストとしては、バウム・テスト、HTPテスト、動的家族画(KFD)などがある。その他としては文章完成テスト(SCT)や内田・クレペリン・テストなどの作業形式のテストももちいられている。(エンカルタ総合大百科、マイクロソフト、2004より抜粋)

ビデオテープ
心理テスト
https://www.youtube.com/watch?v=JN5o55kzkBY
画面右下の「歯車」をクリック)、「字幕」をクリックし
次に「自動翻訳」をクリックしスライダーで「日本語」を選択する
最初から3分25秒 知性、適応力、性格などの評価について。SAT(Scholastic Assessment Test)大学進学評価試験、認知面のテスト、適正評価テスト、性格テスト ロールシャッハテストのような投影法、ミネソタ多面人格テスト(MMPIなどがある。

性格検査法personality test
 
種々の目的に応じて個人の気質,性格,情緒性,社会的適応性,欲求,葛藤,態度,興味,適性,道徳性などを測定・診断する検査法の総称である。狭義には性格検査をさすことがある。
以下の測定用具・方法がある。
[1]質問紙法・チェックリスト法:用意された質問文に本人が自発的に回答していく方法である。集団で実施することもできる。おもに性格,情緒性,社会的適応性,態度,興味,道徳性の測定に利用される。
[2] 作業法:きわめて単純な作業(たとえば加算)を一定時間課し,作業量の推移に着目して気質,性格を測定・診断する方法である。集団で実施することもできる。
[3] 投影法:あいまいな図形や文章を呈示して口頭あるいは文章で回答を求め,性格を測定・診断する方法である。おもに欲求や葛藤などの深層心理を探るために利用される。検査を利用するには専門的な知識と豊富な臨床経験が必要とされる。個人ごとに実施するのが普通である。(心理学辞典、有斐閣、1999より抜粋

性格テストの例
 
性格特性や精神障害の診断
 
代表例
   ロールシャッハテスト
   
谷田部ギルフォード性格検査
   
ミネソタ多面的人格目録(MMPI)
   
内田・クレペリン作業検査
   などが代表

よく利用される心理テスト(心理学辞典、有斐閣、1999より以下抜粋)
内田 = クレペリン精神作業検査Uchida-Kraepelin Performance Test
 ドイツの精神医学者クレペリンによって発案され,内田勇三郎が発展させた人格検査。被験者に,一列に並んだ数値を連続加算する作業を繰り返させ,それによって得られる作業速度の変化を示す曲線(作業曲線)を評価する。作業曲線に性格が反映するとしたのはクレペリンの発想であるが,検査の具体的な手続の開発は内田による。作業効率の安定性,誤答率,開始時や終了直前にみられる作業率の変化,休憩の影響などが評価のポイントである。

矢田部 = ギルフォード性格検査Yatabe-Guilford Personality Inventory
 
YG性格検査。ギルフォードの性格理論に基づき矢田部達郎によって作成された質問紙法性格検査。12の下位尺度ごとに10問計120問の質問項目から構成される。特性論的な解釈を行うだけでなく,全体的プロフィールの傾向から,「平均型」「情緒不安積極型」「安定消極型」「安定積極型」「情緒不安消極型」の五つの類型を典型とする類型論的な評価も可能である。手軽に実施でき,多面的な診断が可能であるため,広く用いられている。回答者の意図的な反応歪曲に弱いという欠点がある。

谷田部ギルフォード性格検査のサンプルはこちら

ロールシャッハ・テストRorschach test
 
ロールシャッハ(Rorschach, H.1921)によって考案された投影法人格検査。初めはインクブロット・テスト(inkblot test)とよばれていたように,検査刺激は,左右対称のインクのシミで,無彩色,赤と黒の2色,複数の色彩を用いたものがある。被験者はそれぞれのカードについて何に見えるかを口頭で述べる。その後,検査者はどのような刺激,特徴がそのように見えさせたのかについて質疑を行う。そして,反応内容,決定因,形態水準などの量的分析,および言語表現上の特徴を分析することにより,被験者のもともとの性格や,思考様式,感情状態,対人関係,自己認知といったパーソナリティ構造を捉えることができる。

ロールシャッハテストとクレペリンテストのサンプルはこちら


発達と知能

ビデオテープ
心理テスト
https://www.youtube.com/watch?v=JN5o55kzkBY
画面右下の「歯車」をクリック)、「字幕」をクリックし次に「自動翻訳」をクリックしスライダーで「日本語」を選択する
3分25秒から9分45秒
 アダムとイブ、中国の科挙テストなどは知的評価テストの原点。イギリスのフランシス・ゴールトンは知能と遺伝子の関係を述べ、フランスのアルフレッド・ビネーは精神遅滞児を見いだすため知能検査を作った。
 アメリカでは学校教育、新入社員そして軍人の評価に知能と適性の検査が使われた。そしてルイス・ターマンは知能指数を考案した。デビッド・ウェクスラーは言葉を使わず図形などによる知能テストを考案した。知能テストや適性テストは大きなビジネスとなっている。

発達development
 子どもが生まれ,大人になる過程での変化をさす。最近の生涯発達心理学では成人期・老年期での変化も含める。発達の過程は,長期の獲得であり、成熟と交互作用する過程に関わる。そこで,遺伝的な規定と環境の影響の交互作用として発達の要因は定式化される。

遺伝と環境の関係についての仮説
 図版はこちら
孤立要因説(生得説,環境説)
 遺伝要因と環境要因のいずれか一方の機能を重視する
 ゲゼル(Gesell, A.L.):成熟レディネス論が代表例
輻輳説
 遺伝と環境の両要因の統合性を強調する
 シュテルン(Stern, W.):遺伝と環境の両要因が相互に作用しあう
 Eに近づくほど遺伝の力が強く、Uに近づくほど環境の力が強くはたらく

相互作用説
 遺伝と環境の両要因間の動的な相互関連性あるいは自己調節性を重視する
 ジェンセン(Jensen, A.R.):特性によって環境条件のはたらき方が異なり、遺 伝的と環境条件が特性ごとに異なるとする

知能測
定の原点
ゴールトンGalton, Francis(1822-1911)
知能検査の開発者。知能の遺伝子関与説。
 イギリスの遺伝学者,心理学者,統計学者。バーミンガムに生まれ,キングス・カレッジ,トリニティ・カレッジに学ぶ。従兄にあたる_ダーウィンの進化論の影響を受けて,遺伝や変異の問題の数量的記述・分析を試みた。また,遺伝学を背景にして個人差や天才の問題に取り組んだ。


知能Intelligence
 知的達成にかかわると思われる種々の要因を列挙し、それを因子分析によってふるいわけることによって、今日では少なくとも次の因子が知能にかかわっていると考えられている。抽象的思考力、合理的思考力、記憶力、言語能力、空間認知能力、新しい環境への適応力、などである。
 初の知能検査は、A.ビネがT.シモンの協力をえて1905年に作成した「知能測定尺度」である。これは、パリ市の教育委員会から、就学前に学校教育についていくのが困難な知的障害児を判別するためのテストを作成するよう依頼をうけてつくられた。(C) 1993-2003 Microsoft Corporation.


知能検査intelligence test
 知能を科学的・客観的に測定するために考案された心理学的測定用具(尺度)であり,結果は標準化の手続を経て作成された基準(norm)に基づき数量的に表示される。
 一般に知能検査は,困難度を異にする一連の問題系列,もしくは下位検査からなっており,これらの精選された問題を一定の検査方法に従って被検者に実施し,各個人の成績をあらかじめ作成された尺度上に位置づけることにより,個人の知能発達の程度を捉えるようになっている。結果は精神年齢(MA),知能指数(IQ)などの単一の全体的指標で示される。

知能指数intelligence quotient ; IQ
ターマンTerman,L(1877-1956)が知能指数を提案
 個人が受けた知能検査の結果を表現する指標の一つで,精神年齢(MA)や知能偏差値(ISS)と並んで用いられ,IQという略称とともに広く世に知られている。
 知能検査を受けた個人の実際の年齢を生活年齢(CA),検査結果から判定される知能を精神年齢とするとき,知能指数は,IQ=(MA/CA)×100で表される。子どもの知能指数が100よりも著しく低い場合,発達の遅れが疑われる。計算する。
 知能指数の考え方自体はドイツのシュテルンの創案によるが,フランスで開発された最初の知能検査であるビネー = シモン尺度がアメリカに渡り,ターマンらによってスタンフォード = ビネー知能検査に発展していった時に取り入れられ実用化されたものである。


IQの分布図はこちら


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