代表的知能検査
ビネーBinet,A(1857-1911)
精神遅滞児の発見を主目的に開発
→学校教育場面での指導に活用(本来の使用目的)
精神年齢と生活年齢の比で査定


ビネー式知能検査Binet test
 
ビネーが僚友の医師シモン(Simon, T.)の協力を得て1905年に作成した,世界で最初の知能検査(Binet-Simon intelligence scale),およびその基本的な考えと方式を踏襲して作成された知能検査を総称して,ビネー式知能検査とよぶ。
 個別には,鈴木 = ビネー,スタンフォード = ビネー知能検査のように,作成者の名前,大学名等を付して表記される。一般にビネー式検査では,さまざまな形式と内容をもった問題が,子どもの発達段階に合わせて易から難へオムニバスな形で配列されており,全体としてどの程度の問題までできたかをもとに精神年齢(MA)や知能指数(IQ)が算出されるようになっている。そのため,幼稚園から小学校中学年の児童の一般知能の測定には適しているが,成人の知能測定や知能の診断的把握には向かないことが指摘されている。


ウェクスラー式知能検査Wechsler's diagnostic intelligence test
 ニューヨークのベルヴュー病院で心理臨床の仕事をしていたウェクスラーは,1939年に個人の知能を診断的に捉えるための診断性知能検査であるウェクスラー = ベルヴュー知能検査(Wechsler-Bellevue Intelligence Scale)を作成した。これが,ウェクスラー式知能検査の最初のものである。この検査は,6種類の言語性検査と5種類の動作性検査によって構成された,10歳から60歳までを適用範囲とする個別検査である。この検査は,後に改訂され,成人用の知能検査(WAIS)となったほか,児童用(WISC)や幼児用(WPPSI)の検査も作成されている。


図版 代表的知能検査について
WAIS-R 成人知能検査
Wechsler Adult Intelligence Scale ? Revised
16.0-74.11歳向け


WAIS-IIIの紹介サイトは こちら(日本文化科学社)

WISC-III 知能検査

Wechsler Intelligence Scale for Children-Third Edition
5.0-16.11歳向け

 言語性下位検査:知識、算数、数唱、理解、単語、類似
 動作性下位検査:絵画完成、組合せ、絵画配列、符号(記号探し)、
 積木模様 、(迷路);かっこ内はWISC-III)
*3.10-7.1歳はWPPSI知能診断検査を用いる


能テストの長所
 
・客観的評価が可能
  →教師による予断や偏見を排除できる     
 ・評価が簡便

知能テストの問題点

 
・差別を助長する危険がある    
  →差別と選別の道具と化した歴史がある(米国)
 ・自己暗示効果
  →プラス面とマイナス面がある
・心理的ストレスにより結果が変わりうる


ビデオクリップ
SAT_テストとプレッシャー

 知能検査の使用に関しては今日さまざまな議論があり、もっとも大きな疑問は次のようなものである。すなわち、ターマンの知能指数(IQ)の導入以来、人の相対的な知能の優劣が関心をよび、身長計測と同じような意味で知能を測定しようとする試みがふえた。
 しかし、障害判別の目的以外に、人の相対的な知能を測定することがどのような意味をもつのか、またそれが測定された人の幸福につながるのかという疑問である。
 知能検査がすべて害毒であるとまではいえなくても、知的障害の程度やその障害の特性を診断して、それを教育や療育の手がかりにするなど、検査をうける人のなんらかの利益につながることが、検査実施の基本条件であるべきだろう。(エンカルタ総合大百科、マイクロソフト、2004 より抜粋)

精神の障害について

精神障害 mental disordersの概念

  精神機能の障害された状態
  ・自らが深く悩む
  ・周囲の人々に支障をあたえる
  ・社会的に自立が困難
   → いずれか一つが当てはまる
   →通常の社会生活を営むのが著しく困難

精神障害の分類

 @精神病Psychosis
   A 統合失調症(精神分裂症)
      症状:幻覚、妄想、させられ体験、病識が無い
      治療法:薬物療法+心理療法
   B そううつ病(感情障害)
      症状:激しい落ち込み、舞上がり
      治療法:薬物療法+心理療法

 A神経症性障害(神経症)
    症状:過度な反応
    治療法:心理療法+薬物療法 

 B精神遅滞、発達障害
    症状:学習困難性
    治療法:心理療法+薬物療法
 
 C依存症その他
    薬物依存症、アルコール依存症、ギャンブル依存症、ネット依存症など
     症状:幻覚、行為障害
     治療法:薬物療法+心理療法


ビデオクリップ
統合失調症ケースと地域
「行きづまりは常にある。行きづまったら次を探す。 
 行きづまりがあきらめにならなければいい・・・ 」

心理療法について

ビデオクリップ
心理学場面の事例
(慶応大学生相談室)

カウンセリングCounseling
 なんらかの悩みや相談事をもってやってくる来談者(クライアント)と、その相談をうけるカウンセラーとの間になりたつ相談活動一般をカウンセリングという。カウンセリングでは,心理学的な知見や技術を用いて来談者(クライアントclient)の人格的発達や適応に寄与する。

心理療法のモデル

 1 精神分析学的モデル
    「無意識世界」に抑圧された「こころのしこり」をほぐす
 2 行動療法的モデル
     行動療法
      「良くない」行動パターンを変容させる
     認知行動療法
      「良くない」思考パターン変容させる
 3 その他
    実存的心理療法:哲学的思考によるアプローチ

心理療法について
心理療法psychotherapy
治療のめざすところは,治療者との治療契約に基づく対人関係を介して患者の認知,行動,感情,身体感覚に変化を起こさせ,症状や問題行動を消去もしくは軽減することである。その方法は言語的,非言語的,芸術療法など道具を生かした介入など多岐にわたる。また患者個人のみを対象とするものから,夫婦,家族,集団を対象とするものまでさまざまである。特定の治療は上記の患者の諸要素のどれかに一義的な変化をもくろむ。たとえば精神分析療法は認知と感情に焦点を当てるし,認知療法,行動療法では患者の認知行動が標的となる。自律訓練法などは身体感覚に訴える方法といえよう。(心理学辞典、有斐閣、1999より抜粋)

心理療法のバックボーンをなすモデル
  精神分析療法と認知・行動療法

精神分析Psychoanalysis
フロイトFreud, Sigmund(1856-1939)が創始した心理療法の理論をさすが、そこから多数の心理療法理論が枝分かれし、その幅広い人間学的な視点によって20世紀の人間科学全体に大きな影響力をもった。その意味ではひとつの思想でもある。
 フロイトの考えによれば、神経症をはじめとする心の病は、過去の心的外傷経験を無意識の世界に抑圧する結果として生じる。すなわち、そのような無意識の世界に抑圧された心的外傷経験や、それにむすびついた無意識の願望を当人が意識化すれば、症状は消失する。そしてこの意識化は、クライアント(心の問題を相談にくる人)の自由連想や夢、分析家に対する感情転移などを分析家が分析・解釈し、それにみちびかれてクライアントが忘却していた過去の体験を想起したり、解釈をうけいれて納得したりすることによって実現される。

行動療法 Behavior Therapy
 行動療法はスキナーSkinner, Burrhus Frederic(1904-90)のオペラント条件付けなどによって構築された学習理論をもとにして、のぞましくない行動を除去し、よりのぞましい行動を定着させようという試みであり、合理的、科学的な治療法と考えられていた。
しかし、近年ではこのアイゼンクEysenck, Hans J_rgen(1916-97)・の定義では、行動療法と一括される広い領域をカバーしきれないとされ、もう少し広く考えられるようになっている。すなわち、以下の2点がふくまれる。
(1)治療の対象となる人の問題を、抽象的な概念によってではなく、環境との相互作用における具体的な「行動」としてとらえる。(2)狭義の学習理論や認知理論、あるいは社会学習理論などの多様な行動科学諸理論にもとづき、のぞましくない行動を変容させるための具体的な仮説をたて、この仮説にもとづく治療の効果を経験的に検証するようこころみる。
エンカルタ総合大百科、マイクロソフト、2004より抜粋、

実存分析Existenzanalyse
《夜と霧》で知られるオーストリアの精神医学者フランクルが第2次大戦後にとなえた学説。人間存在の基盤としての責任性と倫理性に着目しながら,人生の意味と価値を分析していくところに本質があり,その治療理念としてロゴテラピーLogotherapieが生まれた。S.フロイトの〈快楽への意志〉とA.アードラーの〈力への意志〉に対して〈意味への意志〉を鍵概念として主張し,これが満たされない場合には,精神因性神経症noogene Neuroseという名の,実存的危機や良心との葛藤が生ずると説く。世界大百科事典第2版(平凡社)より

書籍
夜と霧
ナチス強制収容所の体験記録

著者:V.E.フランクル〔著〕
池田 香代子訳、 \1,620、1,296(電子書籍版)、みすず書房、2002

用語
ナチス【Nazis】
第一次大戦後,ヒトラーを党首としてドイツに擡頭(たいとう)したファシズム政党。1919年結成。大恐慌下,大ドイツ樹立・ベルサイユ条約破棄・ユダヤ人排斥などを唱えて支持を拡大。33年政権を掌握し,統制経済,再軍備,ユダヤ人や共産主義者への虐待など独裁政治を断行。ヨーロッパ征服をめざして軍備拡張を行い,第二次大戦を起こしたが敗れ,45年崩壊。ナチ。(大辞林、三省堂)


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