■トピックス 大人でも脳細胞は新生する(1999) G. ケンペルマン/F. H.
ゲージ 日経サイエンス 99/8 本文より 成人の脳は障害を受けると,残った神経細胞(ニューロン)の間で新しい結合をつくり,上手に機能を代償することがある。しかし,神経細胞そのもが再生することはない。というのは再生に必要な神経幹細胞がないからだ──つい最近まで,ほとんどの神経生物学者はこう固く信じていた。 昨年11月,スウェーデンのイエーテボリにあるサールグレンスカ大学病院のエリクソン(Peter S.
Eriksson)とカリフォルニア州ラホーヤのソーク生物学研究所のゲージ(Fred H.
Gage)らは,成人脳においても,少なくとも,記憶と学習に重要な海馬においては,ニューロンが日常的に新生しているという驚くべき事実を発表した。 新生ニューロンの数は,全体の数からすれば少ない。それでも,動物での最近の発見を考えると,この発見は,医学にある強い期待を抱かせる。現在のデータによれば,脳のほかの部位でも神経幹細胞は新生ニューロンを生み出している。また,別なほかの部位では幹細胞が存在するが分裂を休止しているようである。 成人脳は見かけ上,修復能が低いが,実際には,大きな再生能力をもっているのだ。 http://www.nikkei.co.jp/pub/science/page_2/magazine/9908/otona.html#writer(削除されています)
日経サイエンスのHPは http://www.nikkei-science.com/
■資料 ゲージ博士が2008年10月に第13 回慶應医学賞を受賞(日本での受賞について) 紹介
Fred H. Gage(フレッドH. ゲージ)
Adler Professor,
Laboratory of Genetics, The Salk Institute for Biological Studies, U.S.A.
1950 年10 月8 日生まれ
授賞研究テーマ 「哺乳類の成体脳におけるニューロン新生の生理的役割の解明」
中枢神経系の疾患や傷害は根治が難しく、成体哺乳動物においては、中枢神経系が一度損傷を受けると二度と再生しないと信じられてきました。ニューロン自体に分裂能がないことに加え、成体脳内にはニューロンを新しく産み出す幹細胞が存在しないためと長らく考えられてきたからです。