■ニュースヘッドライン
脳卒中
傷ついた細胞を食べ、脳の修復促す細胞を発見
毎日新聞2017年6月25日
https://mainichi.jp/articles/20170625/k00/00e/040/161000c
山梨大医学部薬理学講座の小泉修一教授=神経科学=らの研究グループは、脳卒中が起きた後、傷ついた細胞を「食べる」ことで脳の修復を促す新たな細胞を発見した。生理学研究所、新潟大学、群馬大学との共同研究。成果は22日付の英電子科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
脳卒中は国内での死因として4番目に多い病。患者数も約120万人と多く、命を取り留めても、まひや言語障害などの重篤な後遺症が残ることも多い。脳の血流が滞り、酸素や栄養が細胞に届かなくなることで、細胞が徐々に死滅していく。
脳に栄養を供給するなどの機能を持つことが知られている脳の細胞「アストロサイト」に注目。脳卒中モデルのマウスで観察すると、ダメージを受けて傷ついた細胞の切れ端や壊れた細胞から漏れ出した成分を、包み込んで「食べる」様子が観察された。
この食べる働きは、不要なものを脳から除去するための仕組みで「貪食(どんしょく)性」と呼ばれる。これまで別の脳細胞「ミクログリア」が貪食性を持つ細胞として知られてきたが、アストロサイトも同様の機能を持つことが確認された。
また、ミクログリアとアストロサイトは活動する時期や場所が異なることも分かった。ミクログリアは発病直後にダメージを受けた中心部に集まり、死んだ細胞をまるごと食べる。一方、アストロサイトは発病1週間後をピークに働き、周辺の傷ついているが、まだ生きている細胞の傷ついた部分を選択的に食べていることが分かった。
小泉教授は「二つの細胞で役割分担をして、特にアストロサイトは発病後の神経機能の回復に重要である可能性がある」と指摘する。
研究グループは貪食性を獲得するのにたんぱく質「ABCA1」が必要であることも発見。小泉教授は「ABCA1をコントロールできる薬が見つかれば、脳卒中の予後やリハビリのプログラム開発に役立つかもしれない」としている。【松本光樹】
★グリア細胞について(5月30日授業)
http://ichiichi3.web.fc2.com/psyphys2017_053117.htm
■トピックス
眠れないのはiPadのせい? 可能性指摘する専門家も
CNNjp
2010年5月14日
米アップル社の多機能携帯端末「iPad」が米国で発売され人気を呼んでいるが、こうしたバックライト式の端末を就寝前に使うと睡眠サイクルが乱れ、不眠症の原因になるのではないかと懸念する声が出ている。
iPadやノートPC、スマートフォンといった製品の普及で、ユーザーが就寝直前まで明るい光を見続けることがかつてなく増えた。しかしこうした光のせいで脳が夜を昼と認識してしまい、睡眠パターンが妨げられて不眠症の悪化につながる可能性があると指摘する専門家がいる。
ノースウエスタン大学の神経科学教授、フィリス・ジー氏は「可能性として、就寝前に(iPadやノートPCを)使えば、その光のせいで脳が刺激されて眠くなくなり、眠りにつくのが遅くなることはある。起きる時間と寝る時間を決める脳の時計の概日リズムにも影響するかもしれない」と話す。
こうした問題はエジソンが電球を発明した時から始まったとも言われるが、ベッドでの読書にも最適とうたわれるiPadは、従来の紙の書籍やアマゾンの電子書籍端末「キンドル」などと異なり、画面の光が至近距離から直接目に飛び込んでくる。このため寝室でテレビを見る場合や電灯の明かりで読書する場合に比べ、睡眠パターンが妨げられやすいと研究者は言う。
また、人間の目は青色の光に対して敏感であるとされるが、コンピューター画面や電話といった電子機器には、覚醒効果の目的でこの青色の光がよく使用されるという。
睡眠障害の専門医であるレンセラー工科大学のマリアナ・フィゲイロ准教授は、電子端末のバックライト画面と睡眠障害との関係が疑われる患者に、オレンジ色のレンズが付いたサングラスを処方しているという。オレンジ色は青色を排除してくれるからだとういう。
ただし、iPadやノートPCが睡眠サイクルを妨げる可能性についてなされた研究はまだなく、関連を疑問視する研究者もいる。CNNはiPadを持っている数人に取材したが、いずれも就寝前にiPadで読書を楽しんでおり、睡眠の問題は感じていないとの答えだった。
■ビデオクリップ
パイロットが検査中に居眠り
→飛行時居眠り
■トピックス
居眠り運転:
ひかりの運転手が“熟睡” 1700人に影響
毎日新聞 2003年2月27日
26日午後3時20分ごろ、JR山陽新幹線岡山駅(岡山市駅元町)の上りホームに入ってきた広島発東京行き「ひかり126号」が所定の停車位置から100メートル手前で緊急停車した。同駅の職員らが運転席に駆けつけたところ、運転士(33)が運転席に座ったまま居眠りしていた。運転士に事情を聴いたところ、「(岡山駅手前の)新倉敷駅付近で眠気に襲われ、岡山駅で起こされるまで記憶がない」と供述。居眠りのまま約8分間、26キロを最高速度270キロで走行していたことが分かった。約9分後に運転を再開したが、計3本に遅れが出て、1700人に影響が出た。 JR西日本によると、岡山駅で職員が乗務員室のドアをたたいたが、運転士から返答がなかった。このため、車掌が運転席に駆けつけたところ、運転士は意識を回復したという。「病気ではなく、運転継続が可能だ」と話したため、念のため運転士免許を持つ車掌が運転席に同乗して新大阪駅まで走行。運転士は、本来の勤務通り同駅で別の運転士と交代した。
この運転士は広島新幹線運転所の所属で、新幹線の運転歴は1年7カ月。26日は午後1時25分に同運転所で出勤点呼を受け、本人は心身共に異常がないことを報告、見た目にもおかしなところはなかったという。運転士はJR側の事情聴取に「眠ってしまった」と繰り返すだけで、うなだれた様子だったという。
新幹線は停車する駅が近付くと自動的に減速するシステムになっている。その後時速30キロまでに落ちた段階で、運転士が確認ボタンを押し、手動のブレーキ操作を行い、停止する。今回の列車の場合も、自動システムで30キロまでは減速したが、運転士が確認ボタンを押さなかったため、ATC(自動列車制御装置)が引き続き作動し、100メートル手前に停車したという。
新幹線の運転士の居眠りをめぐっては、97年5月、JR西日本岡山新幹線運転所構内で、入れ替え作業中の車両が車止めを突破して、先頭車両が脱線する事故があった。運転士の居眠りが原因だったとみられる。
橋本光人・JR西日本運輸部長の話 あってはならないこと。日ごろから安全運転を指導してきたが、基本動作の徹底を図り、二度とこのようなことが起きないようにしたい。
■ビデオクリップ
新幹線居眠り運転
→睡眠時無呼吸症候群
■資料
■トピックス
7時間睡眠、死亡率最低 10年間の追跡調査で裏付け
毎日新聞 2004年4月27日
◇「長ければいい」は誤解−−すっきり起きられることが大事
人間はどれぐらい眠るのが最も体にいいのだろう。最近の研究で、睡眠時間が7時間前後の人の死亡率が最も低いことが明らかになった。しかも、それより睡眠時間が長いほど死亡リスクは高まるのだという。【太田阿利佐】
■10時間で2倍近く
名古屋大学大学院医学系研究科の玉腰暁子助教授(予防医学)は今年初め、「睡眠時間と死亡との関係」と題する論文を米睡眠学会に発表した。この研究は文部科学省の助成を受け、同大など24の研究機関が行った、生活習慣とがんなどに関する共同調査の結果を分析したものだ。1988〜90年の間に、全国計45カ所、約11万人に平日の平均睡眠時間などの生活習慣を尋ね、10年間にわたって追跡調査した。
それによると、平均睡眠時間ごとに約10年間に死亡した人の割合は、男女とも「7時間(6・5時間〜7・4時間)」と答えた人が最も少なく、死亡率が低いことがわかった。この「7時間」グループを基準にすると、男性の場合、平均6時間で1・09倍、同5時間で1・16倍、同4時間未満で1・62倍も死亡率が高かった。
女性の場合も同様で、6時間で1・05倍、5時間で1・14倍、4時間未満で1・60倍だった。
「睡眠時間が短いと死亡率が高い」というのは分かる気もするが、興味深いのは7時間より長くても死亡率が上昇することだ。男性の場合、平均8時間で1・11倍、同9時間で1・26倍、同10時間以上では1・73倍にはね上がる。女性の場合もそれぞれ1・23倍、1・35倍、1・92倍という結果だった。
■米国でも
玉腰助教授は、このデータをさらに詳しく分析している。例えば本人に自覚がなくても何らかの病気にかかっていると、疲れて睡眠時間が長くなるなどの影響が考えられる。逆にうつ症状や強いストレスがあると、実際より「眠れていない」と感じることが多い。このため、調査開始から2年以内に死亡した人のデータを除き、うつ症状や自覚的ストレス、喫煙や飲酒などの影響も考慮に入れて、死亡のリスクを計算し直したのだ。
すると、男性では、睡眠時間が7時間より短い場合も死亡リスクはほとんど上がらなかった。しかし女性の場合は6時間で1・17倍、5時間で1・08倍、4時間未満では2・0倍と、やはり睡眠時間が短いと死亡のリスクが高くなった。
一方、男女とも、睡眠時間が長くなればなるほど死亡のリスクは高かった。10時間以上の場合、男性では1・67倍、女性は2・03倍にもなっている。
同様の研究結果は、米国でも出ている。特に知られているのは、100万人以上を対象にしたカリフォルニア大サンディエゴ校のD・クリプキ教授らの研究で、やはり、平均睡眠時間が7時間の人が最も死亡率が低かった。
なぜ、7時間睡眠がいいのか。その理由は明らかではない。
玉腰助教授は「睡眠時間が短いと、高血圧や糖尿病のリスクが上昇することは以前から知られている。しかし、反対に睡眠時間が長くても死亡のリスクが高まることについては、今後、生物学的なメカニズムの解明が必要です」と話す。無論、今10時間眠っている人が睡眠時間を7時間にしたからといって、より長生きができるかどうかは現時点
では分からない。
■量より質が大事
睡眠にはリズムがある。通常は、筋肉は弛緩(しかん)しているが脳は活動していて眼球も動いている「レム睡眠」と、いわゆる深い眠りの状態である「ノンレム睡眠」を繰り返す。短い睡眠時間でも健康な人は睡眠を効率よく取っていると考えられている。
「快適睡眠のすすめ」(岩波新書)などの著書もある広島大学の堀忠雄教授(精神生理学)は「一般に、6時間以上の睡眠であれば、レム睡眠もノンレム睡眠も十分取れている」と話し、「睡眠時間よりも睡眠の質を問題にすべきだ」と指摘する。堀教授が挙げる「質の高い睡眠の条件」は、▽寝つきがいいこと▽途中で目が覚めないこと▽目が覚めた時に回復感や爽快(そうかい)感があること−−の三つだ。 ただ、人の眠りについては、未解明の部分も多い。堀教授は「7時間ベッドに入っていても、度々目が覚めるようでは『7時間眠った』とはいえない。最近の調査では、若い人を中心に平日と土、日の睡眠時間の差が大きくなっており、週末の“寝だめ”の影響も不明。逆に、年配の人だと短時間の昼寝の役割も大きい」と指摘し、「これまでの睡眠研究者には『睡眠時間が長いと健康に悪い』という視点がなく、この点については、睡眠中の低体温状態が長時間続くことによる悪影響などを研究する必要がある」と話す。
レオナルド・ダビンチはまとめて眠らず、4時間ごとに15分の睡眠を取っていたといわれるし、相対性理論のアルベルト・アインシュタイン博士は1日10時間眠るのが習慣だった。
現状では、睡眠時間の長さにこだわるより、質のいい睡眠を取ることを心がけた方が、健康にはいいようだ。
■図版
睡眠時間と死亡リスクの図版はこちら
■ウェブ情報
睡眠負債が危ない
NHKテレビ2017年6月18日
http://www.nhk.or.jp/special/sleep/
睡眠
睡眠段階
脳波のパタンによって
stageW(覚醒),Stage1,Stage2,Stage3,Stage4
そしてStageREMに分類出来る。
睡眠記録法
脳波EEG、眼球運動EOG、筋電図EMGなど
の生理的活動を使って睡眠を記録する